咽頭がんとは
咽頭がんとは、喉(のど)の奥にある「咽頭」に発生する悪性腫瘍のことです。
咽頭は、鼻の奥から食道の入り口まで続く管状の器官で、
空気や食べ物の通り道として重要な役割を担っています。
咽頭は大きく次の3つに分けられ、それぞれで発生するがんの特徴や症状が異なります。
- 上咽頭がん:鼻の奥(鼻咽腔)に発生
- 中咽頭がん:口蓋扁桃・舌根(舌の付け根)に発生
- 下咽頭がん:喉の下部、食道の入口付近に発生
日本ではこの中でも下咽頭がんが最も多く、特に男性に多いことが知られています。
咽頭がんは初期には自覚症状が乏しく、
喉の違和感や痛みが続いても「風邪」「喉の炎症」と見過ごされやすい病気です。
気づいたときには進行しているケースも少なくありません。
実は、咽頭がんの早期発見には胃カメラ検査が非常に有効です。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)では、
食道や胃だけでなく咽頭・喉頭の粘膜を詳細に観察することができます。
しかし実際には、喉の観察が不十分なまま検査が終了してしまうことも多く、
早期がんが見逃されるケースも存在します。
当院では、咽頭を含めた上部消化管全体を丁寧に観察する内視鏡検査を徹底し、
これまでに多数の微小ながんを早期発見・治療してきました。
咽頭がんは、早期であれば内視鏡治療のみで完治が可能なこともあります。
喉の違和感、飲み込みづらさ、声のかすれなどが続く場合は、
早めの胃カメラ検査をおすすめします。
咽頭がんの分類
咽頭がんは、発生する部位によって以下の3つに分類されます。
部位ごとに原因・症状・治療方針が大きく異なります。
上咽頭がん
上咽頭は鼻の奥(鼻咽腔)に位置し、耳管の開口部にも近い部位です。
日本では比較的まれですが、中国南部や香港などの東アジア地域では発症率が高いことが知られています。
EBウイルス感染との関連が強く、
耳の閉塞感、鼻づまり、鼻出血、首のしこりなどが初期症状としてみられます。
中咽頭がん
中咽頭は、口蓋扁桃(扁桃腺)や舌の付け根(舌根部)を含む部位です。
従来は喫煙・飲酒が主な原因でしたが、
近年はヒトパピローマウイルス(HPV)感染による発症が増えています。
HPV関連中咽頭がんは、非喫煙者や若年層にも発症することがあり、
早期であれば内視鏡治療で治癒できるケースもあります。
下咽頭がん
下咽頭は喉の最も下部に位置し、食道の入口に続く部分です。
日本では咽頭がんの中で最も多く、
喫煙と飲酒が強く関与しています。
初期症状がほとんどないため、
発見時にはリンパ節転移を伴っていることも少なくありません。
咽頭がんの原因・リスクファクター
喫煙
タバコに含まれる有害物質が咽頭粘膜を慢性的に刺激し、
がんの発生リスクを高めます。
1日20本以上を10年以上続けている方では、
非喫煙者に比べ5倍以上リスクが高くなるとされています。
飲酒
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには強い発がん性があります。
特に、お酒を飲むと顔が赤くなる体質(ALDH2不活性型)の方では、
咽頭がんのリスクが6〜10倍に上昇すると報告されています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
近年、中咽頭がんを中心にHPV感染との関連が注目されています。
HPV関連がんは若年層や非喫煙者にも発症する特徴があります。
咽頭がんの症状
咽頭がんは初期症状が非常に分かりにくく、
風邪や喉の炎症と間違われやすい病気です。
- 喉の違和感・痛みが続く
- 飲み込みにくい(嚥下障害)
- 声のかすれ(嗄声)
- 片耳の奥の痛み・難聴
- 首のしこり
- 血の混じった唾液
これらの症状が2週間以上続く場合は、
早めに内視鏡検査や耳鼻咽喉科での精査が必要です。
咽頭がんの検査・診断
内視鏡検査(喉頭・咽頭内視鏡/胃カメラ)
咽頭がんの診断には内視鏡検査が不可欠です。
当院では、特殊光(NBI)を用いて、
咽頭の微細な粘膜変化や血管異常まで詳細に観察します。
組織検査(生検)
疑わしい病変があれば、組織を採取して確定診断を行います。
画像検査(CT・MRI・PET)
がんの広がりや転移の有無を評価し、
正確な病期(ステージ)を決定します。
咽頭がんの治療
治療法は、がんの進行度や部位、全身状態に応じて決定されます。
手術・内視鏡治療
早期であれば、喉を切らずに内視鏡的切除で治癒を目指せます。
進行例では喉頭合併切除が必要になることもあります。
放射線治療
早期がんでは放射線治療のみで治癒可能な場合もあり、
声や喉の形態を温存しやすい治療です。
化学放射線療法(CRT)
進行がんでは、抗がん剤と放射線を併用し、
喉を残す治療を目指します。
まとめ
咽頭がんは、早期には気づきにくい病気ですが、
早期発見できれば治るがんです。
喉の違和感や声の変化、飲み込みづらさが続く場合は、
自己判断せず早めに検査を受けましょう。
当院では、苦痛の少ない内視鏡検査で
咽頭がんの早期発見にも力を入れています。
お気軽にご相談ください。
参考文献
- Gillison ML, et al. J Clin Oncol. 2015
- Yokoyama A, et al. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003
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