このページでは、消化器病専門医・消化器内視鏡専門医である院長が、逆流性食道炎の原因から治療、日常生活での対策まで分かりやすく解説します。
目次
1. 逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃の中の胃酸や胆汁が食道へ逆流し、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。本来、食道は酸に弱いため、逆流が繰り返されることで粘膜が傷つき、さまざまな不快な症状を引き起こします。
近年、日本で患者数が急増している背景には、以下の理由が挙げられます。
- 食生活の欧米化(高脂肪・高カロリー食)
- ピロリ菌感染率の低下(胃酸分泌が盛んになるため)
- 肥満や加齢による体型の変化
- 猫背やデスクワークによる姿勢の悪化
放置すると「バレット食道」という状態になり、将来的に食道がんのリスクを高めることが知られているため、早期の診断と治療が重要です。
2. 逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は、主に4つの要素が組み合わさって発症します。
① 胃酸が過剰になる
食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、脂っこい食事は胃酸を増やします。また、ストレスやピロリ菌除菌後も胃酸分泌が活発になることがあります。
② 逆流防止弁(下部食道括約筋:LES)のゆるみ
胃と食道のつなぎ目にある「弁」が、加齢や肥満、食道裂孔ヘルニアなどによって緩むと、胃酸が容易に逆流します。また、血圧の薬などの副作用で緩む場合もあります。
③ 食道の動き(蠕動運動)の低下
逆流した胃酸を胃に押し戻す力が弱まると、酸が食道に長く留まり、炎症が悪化します。加齢や糖尿病などが影響します。
④ 生活習慣・腹圧の上昇
猫背、きつい服による締め付け、食後すぐに横になる習慣などが、物理的に胃酸を押し上げます。
3. 逆流性食道炎の症状
症状は多岐にわたり、胃以外の場所に違和感が出ることも少なくありません。
| 主要な症状 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 胸やけ | みぞおちから胸にかけて「熱い」「ヒリヒリする」不快感。 |
| 呑酸(どんさん) | 酸っぱい液体が口まで上がってくる感覚。 |
| のどの違和感 | つかえ感、イガイガ、慢性的な声のかすれ、長引く咳。 |
| その他 | 胃もたれ、げっぷ、睡眠中のむせこみ、口臭。 |
4. 逆流性食道炎の検査・診断
最も確実な診断方法は胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)です。粘膜の炎症状態を直接確認し、がん等の他疾患がないかを鑑別します。
胃カメラによる重症度分類(改訂ロサンゼルス分類)
内視鏡で見える炎症の広がりによって、以下のように分類されます。
| グレード | 状態 |
|---|---|
| N | 粘膜障害を認めない(症状のみある状態:NERD) |
| M | わずかな赤みや白っぽい変化のみ |
| A | 5mm以下の小さな粘膜障害(びらん)がある |
| B | 5mm以上の粘膜障害があるが、周状ではない |
| C | 粘膜障害が繋がり、食道の全周の75%未満に広がっている |
| D | 全周の75%以上に及ぶ重度の粘膜障害 |
5. 逆流性食道炎を治療しないといけない理由
「ただの胸やけ」と放置するのは危険です。慢性的な炎症は、以下の合併症を招く恐れがあります。
- バレット食道・食道がん:食道の粘膜が変質し、がんが発生しやすい土壌になります。
- 食道狭窄:炎症が繰り返されることで食道が狭くなり、食べ物が通らなくなります。
- 呼吸器への影響:逆流した酸が気管に入り、喘息の悪化や肺炎を引き起こすことがあります。
6. 逆流性食道炎の治療
治療の2本柱は「薬物療法」と「生活習慣の改善」です。
① 薬物療法
| 薬剤の種類 | 特徴 |
|---|---|
| PPI(プロトンポンプ阻害薬) | 胃酸分泌を強力に抑える標準的な薬です。 |
| P-CAB(新世代の酸抑制薬) | PPIよりも即効性が高く、重症の方にも効果的です。 |
| 消化管運動改善薬 | 胃の排出を助け、逆流そのものを減らします。 |
7. 逆流性食道炎の対処法(食事・生活習慣)
薬で良くなっても、生活習慣がそのままだと再発を繰り返します。
日常の注意点
- 食後すぐに横にならない:最低2〜3時間は体を起こしておきましょう。
- 寝る姿勢の工夫:上半身を少し高くして寝る、または右側を下にすると胃の内容物が流れやすくなります。
- 腹圧を下げ:猫背を直し、ベルトや下着で強く締め付けないようにします。
食事のポイント
- 控えるもの:脂っこいもの(ラーメン・揚げ物)、甘いもの(チョコ)、刺激物(辛いもの・コーヒー・炭酸)、アルコール。
- おすすめのもの:おかゆ、うどん、鶏むね肉、白身魚、豆腐、バナナなど消化の良いもの。
8. まとめ
逆流性食道炎は、適切な治療と生活習慣の見直しで、症状を劇的に改善できる病気です。しかし、自己判断で放置すると食道がんのリスクを高めてしまう側面もあります。
「いつものことだから」と我慢せず、一度当院へご相談ください。専門医が、あなたに最適な治療プランをご提案いたします。
9. 参考文献
・日本消化器病学会 編集:胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン

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