萎縮性胃炎(慢性胃炎)とは
萎縮性胃炎とは、長期間にわたり胃の粘膜に炎症(慢性胃炎)が続くことで、
胃酸などを分泌する機能が低下し、胃の粘膜が薄く萎縮してしまう状態です。
主な原因はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染で、
多くは幼少期に感染し、数十年という長い年月をかけて胃の粘膜の萎縮が進行します。
萎縮が進行すると「腸上皮化生」という状態になり、
胃がんの発生リスクが高まることが知られています。
実際、臨床で発見される胃がんの多くは、萎縮性胃炎を背景に発生します。
ピロリ菌を除菌することで、萎縮性胃炎の進行を抑えることができ、
胃がんの発症リスクを約25%まで低下させられると報告されています。
萎縮性胃炎と慢性胃炎について
慢性胃炎とは、胃の粘膜に炎症が長期間続いている状態の総称です。
慢性胃炎には以下のような種類があります。
- 表層性胃炎
- びらん性胃炎
- 萎縮性胃炎
- 鳥肌胃炎
- 自己免疫性胃炎
一般的に医療機関で「慢性胃炎」と診断された場合、
ピロリ菌感染による萎縮性胃炎を指していることがほとんどです。
萎縮性胃炎の原因
萎縮性胃炎の最大の原因はピロリ菌感染です。
ピロリ菌は、幼少期に井戸水などの不衛生な水や、
家族からの口移しなどを介して感染することが多いとされています。
感染したまま長期間放置されると、胃粘膜に慢性的な炎症が起こり、
徐々に粘膜が萎縮し、胃がんが発生しやすい状態になります。
ご両親にピロリ菌感染や除菌歴がある方は、
家族内感染の可能性があるため、一度検査を受けることが推奨されます。
なお、まれに自己免疫性胃炎と呼ばれる、
体の免疫が胃酸分泌細胞を攻撃して起こる萎縮性胃炎もあります。
このタイプも胃がんリスクが高いため注意が必要です。
萎縮性胃炎の症状
萎縮性胃炎では胃酸分泌が低下するため、消化不良を起こしやすく、
以下のような症状がみられることがあります。
- 胃もたれ
- お腹の張り(腹部膨満感)
- 胃の不快感・痛み
- 胸やけ
- 吐き気・嘔吐
- 食欲不振
- 倦怠感
ただし、約半数の方は無症状で、
自覚症状がないまま進行する点が萎縮性胃炎の怖いところです。
萎縮性胃炎の検査・診断
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
萎縮性胃炎の診断は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で行います。
胃の粘膜を直接観察し、萎縮の有無や範囲を評価します。
ピロリ菌感染が疑われる場合は、追加検査で感染の有無を確認します。
萎縮性胃炎の分類(木村・竹本分類)
日本では、胃カメラ所見に基づく木村・竹本分類が用いられます。
萎縮の広がりにより、
クローズ型(C-1~C-3)と
オープン型(O-1~O-3)に分類され、
オープン型になるほど胃がんリスクが高くなります。
萎縮性胃炎の内視鏡画像の特徴
正常な胃では、RAC(集合細静脈が規則的に配列する像)が観察されます。
これはピロリ菌未感染の正常胃の特徴です。
一方、萎縮性胃炎ではRACが消失し、
粘膜が薄くなることで血管が透けて見えたり、
胃のヒダが消失したりします。
ピロリ菌を調べる検査
ピロリ菌検査には以下の方法があります。
- 迅速ウレアーゼ試験(内視鏡時)
- 尿素呼気試験
- 便中抗原検査
- 血清抗体検査
ABC分類(胃がんリスク検査)
ABC分類とは、血液検査で
ピロリ菌抗体とペプシノゲン値を測定し、
胃がんリスクをA~D群に分類する検査です。
A < B < C < D の順に胃がんリスクが高くなります。
萎縮性胃炎の治療
一度萎縮した胃粘膜を完全に元に戻すことは困難です。
そのため治療の目的は、進行を止め、胃がんを予防することです。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌感染が確認された場合、
抗菌薬と胃薬を1日2回・7日間内服します(一次除菌)。
成功率は約90%で、二次除菌まで含めると95%以上で除菌可能です。
胃がん予防のために
定期的な胃カメラ検査の重要性
ピロリ菌を除菌しても、萎縮が残っている場合は胃がんリスクがゼロにはなりません。
そのため、定期的な胃カメラ検査による経過観察が非常に重要です。
参考文献
- Uemura N, et al. N Engl J Med. 2001
- Fukase K, et al. Lancet. 2008
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